執筆: Leverages Global編集部 (ライター)
監修: 濱川 恭一 (行政書士)
人手不足に悩む企業にとって、人材確保は大きな問題です。自社で経験を積んだ技能実習生を、特定技能へ移行させて引き続き雇用したいと考える企業は多いでしょう。しかし、在留資格の切り替えにあたっては、満たすべき移行条件や煩雑な手続き、用意すべき必要書類など、事前に把握しておくべき実務が少なくありません。
この記事では、技能実習から特定技能へ移行する具体的な流れや申請時の必要書類、企業が知っておくべきメリット・デメリットを解説。さらに、在留期限が迫った場合の対処法といった、よくある質問にも回答します。即戦力人材の長期雇用を成功させるための実践的なガイドとして、ぜひお役立てください。
この記事のまとめ
- 技能実習から特定技能への移行により、自社の業務を熟知した即戦力人材の長期雇用が可能
- 特定技能へ移行することで、関連業務を含めて任せられる業務の幅が広がるうえ、受け入れ人数の制限もないため多くの人材を確保できる
- 特定技能への移行は多数のメリットがあるが、在留資格の変更手続きでは、義務化された支援計画の作成や多岐にわたる必要書類の準備が伴う
- スムーズかつ確実に在留資格の移行を進めるなら、登録支援機関や行政書士への相談が有効
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目次
「技能実習」と「特定技能」はどのような在留資格?
外国人雇用を検討する際、よく耳にするのが「技能実習」と「特定技能」という2つの在留資格です。どちらも外国人が日本国内で就労するためのものですが、制度が創設された背景や目的は全く異なります。
外国人材を自社で受け入れるにあたって、まずはそれぞれの在留資格がどのような制度なのか、基本的な内容を理解しておきましょう。
在留資格「技能実習」とは
技能実習とは、日本の知識や技術を開発途上国へ移転し、国際貢献を果たすことを目的とした在留資格です。外国人材を技能実習生として受け入れ、実際の業務を通じて実践的なスキルを習得してもらいます。
在留期間は最長で5年間です。期間満了後は原則として母国へ帰り、習得した技術を活かして経済発展に貢献することが期待されています。
なお、2027年4月1日から、技能実習制度は人材の確保と育成を目的とした「育成就労制度」へと移行します。
在留資格「特定技能」とは
特定技能とは、国内の深刻な人手不足に対応するため、2019年4月に創設された在留資格です。特に国内人材の確保が困難とされている16の特定産業分野において、一定の専門性や技能を持つ外国人材を受け入れることを目的としています。
特定技能には1号と2号があり、1号の在留期間は通算で最長5年です。より熟練した技能を持つ2号へ移行できれば、在留期間の更新上限はなくなります。くわえて、将来的な永住権の申請や家族の帯同も可能になります。
参照元:
厚生労働省「外国人技能実習制度について」
出入国在留管理庁「受入れ機関の方」
出入国在留管理庁「育成就労制度」
出入国在留管理庁「特定技能制度に係る制度の運用に関する基本方針・分野別運用方針・運用要領」

特定技能1号と2号の違いとは?在留期間や永住権など6つの項目で徹底比較
「技能実習」と「特定技能」の違い
技能実習と特定技能は、制度の目的が根本から異なります。
技能実習は日本の技術を海外へ移転する国際貢献を目的としており、期間終了後は母国へ帰国することが前提の制度です。一方、特定技能は国内の人手不足の解消を目的とした在留資格であり、外国人を即戦力の労働者として長期的に雇用できます。
また、技能実習生は一つの企業で技術を習得することが目的であるため、原則として転職が認められていません。これに対して特定技能外国人は、同一の業務区分内であれば本人の意思で自由に転職が可能です。
さらに、受け入れ人数の制限においても違いが見られます。技能実習には企業の規模に応じた上限枠が設けられていますが、特定技能では介護・建設分野を除き、企業ごとの受け入れ人数に制限がありません。そのため、特定技能のほうが人手不足の状況に合わせて多くの人材を確保しやすいという特徴があります。

技能実習と特定技能の違いとは?移行方法やメリット・デメリットを解説
「技能実習」から「特定技能」への移行について
「技能実習2号」を修了した外国人は、在留資格を「特定技能1号」へ移行して日本で働き続けられます。同じ企業はもちろん、転職して異なる会社での就労も可能です。
「技能実習」から「特定技能」への移行条件
技能実習から特定技能へ移行する際は、原則として以下の2点を満たす必要があります。
- 技能実習2号を良好に修了していること
- 技能実習で携わった職種や作業内容と、「特定技能1号」で行う業務が関係していること
上記の条件を満たしていれば、特定技能1号を取得する際に通常課される日本語試験と技能試験が免除されます。
「技能実習」から「特定技能」へ移行可能な分野
技能実習から特定技能に移行する際の関連業種は、出入国在留管理庁が公開している「技能実習2号移行対象職種と特定技能1号における分野(業務区分)との関係について」の対応表に示されています。表中の「職種名」「作業名」が技能実習における職種や作業にあたり、「分野(業務区分)」が特定技能外国人を雇用できる特定産業分野のことです。
2026年5月時点で、特定技能の対象となっているのは以下の16分野です。
技能実習の職種や作業内容によっては、対応する特定産業分野がなく、特定技能へそのまま移行できない場合があります。受け入れを検討する際は、自社の職種が移行対象に含まれているか、最新の情報を必ず確認しておきましょう。
参照元:出入国在留管理庁「特定技能制度」
「技能実習」から「特定技能」へ移行するメリット
技能実習から特定技能へ移行することで、自社で経験を積んだ即戦力の人材を長期的に雇用可能です。また、任せられる業務の拡大や受け入れ人数制限の緩和など、企業にとって多くのメリットがあります。
ここでは、技能実習から特定技能へ移行する具体的な4つのメリットについて、詳しく解説します。
即戦力として引き続き雇用できる
新たな採用活動や一からの教育を行うことなく、自社の業務を熟知した即戦力人材を引き続き雇用できます。自社で経験を積んだ技能実習生であれば、仕事内容はもとより、社内ルールや職場の人間関係まで深く理解している状態です。
さらに、本人の人柄や適性をあらかじめ把握しているため採用ミスマッチのリスクが少なく、在留資格を特定技能へ切り替えた直後から活躍が期待できます。
在留期間の延長で長期的な雇用が可能になる
特定技能へ移行することで在留期間が延長され、同一の外国人材を長期的に雇用できるようになります。技能実習は最長5年で帰国することが前提ですが、特定技能1号へ移行すればさらに通算で最長5年間の就労が可能になり、合計で最長10年間にわたり自社で活躍してもらえます。
さらに、より熟練した技能が求められる特定技能2号へステップアップすれば在留期間の更新上限がなくなるため、事実上無期限で雇用し続けることも可能です。
関連業務を含めて任せられる業務の幅が広がる
特定技能へ移行した後は、技能実習のときよりも任せられる業務の幅が大きく広がります。
技能実習制度では実習計画書に定められた特定の作業しか認められていませんでしたが、特定技能では同一分野内の幅広い業務に従事させることが可能です。主要な作業だけでなく、それに付随する周辺の関連業務も任せられるようになるため、現場の状況に合わせた柔軟な人員配置が行えるようになります。
受け入れ人数の制限がなくなり多くの人材を確保できる
特定技能制度では原則として企業ごとの受け入れ人数に制限がないため、人手不足の規模に合わせて多くの人材を確保できます。技能実習制度では、企業の常勤職員数に応じて一度に受け入れられる人数に上限が設けられていました。しかし、特定技能であれば介護分野や建設分野といった一部の例外を除き、人数制限を気にすることなく必要な労働力を柔軟に雇用できるようになります。
「技能実習」から「特定技能」へ移行した際のデメリット
技能実習から特定技能への移行はメリットがある一方で、人件費の上昇や人材流出といったデメリットも存在します。在留資格が切り替わることで、雇用条件や受け入れ企業が果たすべき義務に変化がある点にも注意が必要です。
予期せぬトラブルを防ぎ安定した雇用を続けるために、あらかじめ押さえておくべき3つのデメリットを解説します。
スキルや経験の評価により賃金水準が上昇する
特定技能へ移行した後は、技能実習生として積んできた実務経験や保有スキルに応じた給与設定が必要となり、賃金水準が上昇します。日本人と同等以上の報酬を支払うというルール自体は技能実習も同様ですが、特定技能では数年の実務経験を積んだ即戦力としての待遇がベースです。給与の基準が未経験者レベルから経験者水準へと変わるため、企業にとっては人件費の負担増につながりやすくなります。
実際、厚生労働省が発表した「令和7年賃金構造基本統計調査」によると、技能実習の平均賃金が190,300円だったのに対し、特定技能の平均賃金は221,400円でした。統計上でも3万円近い差が生じています。
同一業種内での転職が可能になり人材流出のリスクがある
原則として転籍が認められなかった技能実習とは異なり、特定技能では同一の業務区分内であれば自由に転職が可能です。そのため、より給与などの待遇が良い企業や、自身が希望する生活環境に合った企業へ人材が流出するリスクが生じます。
人材の流出を防ぐためには、定期的な面談による丁寧なフォローや納得感のある評価制度の構築といった環境改善が有効です。
登録支援機関への委託費用など継続的なコストが発生する
特定技能1号の受け入れ企業は、法律で義務化されている10項目の支援計画を実施しなければなりません。これらの煩雑な支援業務を自社で完結できない場合は外部の登録支援機関へ委託することになり、外国人材1人あたり毎月数万円の支援委託料金が固定費として発生します。
登録支援機関へ委託すれば雇用期間を通じて毎月のランニングコストがかかり続けるため、あらかじめ予算として見込んでおくことが大切です。
参照元:
厚生労働省「令和7年賃金構造基本統計調査 結果の概況」
出入国在留管理庁「1号特定技能外国人支援・登録支援機関について」

登録支援機関に委託する費用相場や内訳!特定技能外国人の受け入れについて
技能実習から特定技能への移行手続き
技能実習から特定技能への移行手続きは、事前の準備から出入国在留管理局への申請まで、適切な手順に沿って進めることが重要です。手続きを滞りなく完了させるための具体的な流れと、申請時に必要な書類について解説します。
移行手続きの具体的な流れ
在留資格の変更手続きは、以下のステップに沿って進めます。
- (支援を委託する場合)特定技能外国人の活動を支援する登録支援機関と委託契約を結ぶ
- 外国人と企業が雇用契約を結ぶ
- 事前ガイダンスで契約内容や行える業務などを伝え、健康診断を実施する
- 外国人が業務や日常生活を円滑に行えるように支援計画を作成する
- 共通の必要書類に加え分野や国別の独自書類を準備する
- 出入国在留管理局へ在留資格変更許可申請を行う
なお、受け入れ企業は各分野の協議会に加入する必要があります。加入のタイミングは分野ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
「特定技能」を申請する際の必要書類
技能実習から特定技能へ移行する際の「在留資格変更許可申請」に必要な書類は、特定産業分野や外国人の国籍によって異なります。企業と外国人がそれぞれ用意する書類があるので、確認のうえ早めに準備しましょう。
企業が用意する書類
雇用主が用意する書類は、企業の規模や実績などの条件により、出入国在留管理庁の規定で3種類(第2表の1〜3)に分かれています。
主なものとしては、法人の登記事項証明書や直近の決算書など、経営の安定性や適正さを証明する書類です。これらに加えて、外国人材の待遇を明確にするための特定技能雇用契約書や雇用条件書、適切な受け入れ体制を約束する各種誓約書なども準備します。
自社がどの区分に該当するかによって必要書類は異なるため、詳細は出入国在留管理庁のWebサイトで確認、または登録支援機関や行政書士に相談してみてください。
Leverages Global(レバレジーズグローバル)は、人材紹介のみならず登録支援機関として貴社のサポートが可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
外国人が用意する書類
外国人が用意する書類には、在留資格変更許可申請書や「特定技能1号」に係る提出書類一覧表、特定技能雇用契約書の写し、健康診断個人票などがあります。また、直近1年度分の個人住民税の課税証明書や納税証明書、給与所得の源泉徴収票の写し、国民健康保険料(税)納付証明書といった公的書類の提出も必要です。
なお、「同一年度内に特定技能外国人を既に受け入れている機関」や「一定の実績があり適正な受入れが見込まれる機関」に該当する場合、特定技能外国人の報酬に関する説明書や雇用の経緯に係る説明書など、一部の書類の提出を省略できます。
さらに、過去1年以内の在留諸申請において既に提出済みであり、現在もその内容に変更がない場合に限り、直近1年度分の個人住民税の課税証明書や納税証明書、国民健康保険料(税)納付証明書なども省略が可能です。
このように書類を省略できるケースもあるため、企業側も外国人本人と一緒に出入国在留管理庁のWebサイトで必要書類を確認しましょう。そのうえで、提出が必要な公的書類については外国人本人が役所から直接取り寄せる必要があるため、企業側から早めに声をかけて準備を促すのがスムーズです。
特定産業分野ごとの書類
特定技能の在留資格変更許可申請を行う際には、特定産業分野ごとに決められた書類の提出が求められます。
たとえば、建設分野の場合は「建設特定技能受入計画の認定証の写し」の提出が必要です。宿泊分野の場合は、「旅館・ホテル営業の営業許可証の写し」を提出しなければなりません。
各特定産業分野ごとの必要書類は、出入国在留管理庁のWebサイトにまとめられています。
二国間協力に関する書類
二国間協力とは、特定技能人材の受け入れや送り出しを円滑に行うために、日本と外国が作成している取り決めのことです。協力覚書(MOC:Memorandum of Cooperation)とも呼ばれます。
特定技能人材の送り出し国と二国間協力の覚書を締結している場合、特定技能を申請する前後に、外国人本人が母国で手続きをしなければならないケースがあります。たとえば、ベトナム人の場合は、労働契約を結んだあとにベトナム海外労働管理局(DOLAB)へ申請して、推薦者表による承認を受けなければなりません。
2026年時点で二国間の協力覚書を締結している国は、インドネシアやフィリピン、ミャンマーなど17カ国です。
参照元:
出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」」
出入国在留管理庁「特定技能関係の申請・届出様式一覧」
出入国在留管理庁「特定技能に関する二国間の協力覚書」

【完全版】外国人雇用の必要書類まとめ|採用前から入社後の手続きまで網羅
技能実習から特定技能への移行に関するよくある質問
特定技能への切り替えを進める際、手続きのタイミングや試験の免除規定など、判断に迷うケースもあるでしょう。ここでは、技能実習から特定技能への移行に関するよくある質問について回答します。手続きをする前に疑問を解消しておきましょう。
「特定技能」移行前に在留期限が来る場合はどうしたらいい?
技能実習の在留期限までに特定技能への移行申請が間に合わない場合は、特例措置として在留資格「特定活動」へ変更申請を行うことで、日本に滞在したまま移行準備を進めることができます。
ただし、以下の条件を満たしていることが前提です。
- 外国人が「技能実習2号」を良好に修了していること(または修了見込みであること)
- 外国人の在留期間の満了日までに、「特定技能1号」への在留資格変更許可申請を行えない合理的な理由があること
- 外国人が「特定活動」で就労する際に、「特定技能1号」で携わる予定の業務に従事すること
- 外国人が「特定技能1号」になった際に支払われる予定の報酬額と同額で、かつ日本人と同等額以上の報酬が支払われること
- 企業または支援委託予定先が、外国人の在留中の日常生活の支援を適切に行うと見込まれること
- 企業が外国人を適正に受け入れると見込まれること
参照元:出入国在留管理庁「特定技能関係の特定活動(「特定技能1号」への移行を希望する場合)」
技能実習から特定技能へ移行する際に一時帰国は必要?
技能実習を修了した後は、原則として母国に帰国する必要があります。ただし、技能実習から特定技能に移行する際に一時帰国は不要です。そのため、日本に滞在したまま継続して同じ企業で就労したり、転職手続きを進めたりすることができます。
技能実習から特定技能へ移行する際に試験はある?
技能実習2号を良好に修了しており、同じ職種や作業内容に関連する特定産業分野へ移行する場合は日本語試験と技能試験が免除されます。
ただし、技能実習時代とは全く異なる分野へ移行する場合は、日本語試験のみが免除され、新しい分野の技能試験への合格が必須です。
まとめ
技能実習から特定技能への移行は、自社の業務を熟知した即戦力人材を長期的に雇用できる絶好の機会です。任せられる業務の幅が広がり、受け入れ人数の制限が緩和されるなど、深刻な人手不足に悩む企業にとって多くのメリットがあります。
ただし、移行に伴う賃金水準の上昇や自由に転職が可能になることによる人材流出リスク、外部委託時のランニングコストといったデメリットへの対策も欠かせません。メリットとデメリットの双方を正しく理解し、自社の受け入れ体制を整えておくことが安定雇用のカギとなります。
また、在留資格の変更手続きは用意する書類が多岐にわたり、スケジュール管理も複雑です。スムーズに切り替えを進めるためにも、出入国在留管理庁の情報を確認しながら、必要に応じて登録支援機関や行政書士といった専門家への相談も検討してみてください。
Leverages Global(レバレジーズグローバル)は人材紹介のみならず、専門家等と連携し入社に伴う書類作成サポートや、入社後の定着支援なども行っております。登録支援機関として、特定技能人材への義務的支援にかかるサポートも代行いたしますので、手続きにご不安な方もぜひお気軽にお問い合わせください。

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