執筆: Leverages Global編集部 (ライター)
人手不足解消や専門性の高い人材の確保を目的として、特定技能外国人の雇用を検討している企業もあるでしょう。在留資格「特定技能」をもつ外国人材の多くはベトナム人です。ベトナム人を特定技能で雇用するには、独自の手続きを行う必要があります。
そこで、本記事ではベトナム人の特定技能人材の送り出し・受け入れの仕組みを解説。認定送り出し機関の確認方法や雇用時の注意点もまとめているので、参考にご覧ください。
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目次
この記事のまとめ
- ベトナムの特定技能では、現地から受け入れる場合のみ送り出し機関の利用が必須である
- 送り出し機関はDOLAB認定が条件で、認定と認定喪失の2つのリストを突き合わせて確認する
- 日本国内での採用でも、技能実習修了者と2年以上の課程を修了した留学生は推薦者表が必要になる
- 労働者提供契約や費用の内訳を事前に確認し、不明点は専門家等へ相談するのが確実である
国内人材を確保することが難しい産業分野において、労働力を確保するために2019年に創設されたのが在留資格「特定技能」です。在留資格「特定技能」をもつ外国人材は、特定の産業分野において一定の専門的知識や技術を有しており、即戦力として期待できる人材といえます。
ただし、特定技能外国人は特定産業分野に指定されている17分野(2026年6月1日時点)でしか雇用できません。2024年3月に自動車運送業と鉄道、林業、木材産業が追加され、2026年6月にはリネンサプライ、さらに省令等の準備が整い次第、物流倉庫、資源循環の追加・運用開始が決定しており、対象は19分野に拡大しています。特定技能外国人を雇用したい企業は、自社で受け入れ可能かあらかじめ調べておくと安心です。
特定技能制度における受け入れ・送り出しの仕組み
企業が特定技能外国人を受け入れるには、産業分野に応じた特定技能協議会に加入し、特定技能所属機関になるための条件を満たす必要があります。特定技能所属機関として認められる条件は以下のとおりです。
- 特定技能外国人と適切な雇用契約を結ぶこと(日本人と同等以上の報酬を支払うなど)
- 受け入れ機関自体が適切な経営を行っていること(5年以内に入管法違反や労働基準法違反を起こしていないなど)
- 特定技能外国人を支援する体制が整っていること(特定技能外国人が十分に理解することができる言語での支援ができる)
- 特定技能外国人を支援するために適切な計画を作成すること
出典:出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック~特定技能外国人の雇用を考えている事業者の方へ~」p.11
企業内で特定技能外国人の支援が難しい場合、登録支援機関に支援委託を行うことで十分な支援体制があると認められます。ただし、特定技能協議会へは在留資格申請の前に必ず加入する必要があるので注意しましょう。
日本はベトナムやフィリピン、ミャンマーといった複数の送り出し国とのあいだで、特定技能外国人の受け入れ・送り出しに関する二国間協定を締結しています。二国間協定は、送り出し国とのスムーズかつ適正なやり取りを主目的としているため、日本と相手国の双方の法令を遵守していれば、二国間協定を締結していない国からも特定技能外国人の受け入れは可能です。特定技能人材の送り出し基準は国によって異なるため、事前に確認するようにしましょう。
在留資格「特定技能」に関係する機関
特定技能外国人を受け入れる際には、送り出し機関と受け入れ機関、登録支援機関が関わります。
ここでは、それぞれの関係機関が担う役割について紹介するので、受け入れを検討している企業はチェックしておきましょう。
送り出し機関
日本で働きたい外国人材を自国から送り出すのが「送り出し機関」の役割です。ベトナムから特定技能外国人を受け入れる場合は、ベトナム政府に属するベトナム内務省海外労働管理局(DOLAB)の認定を受けた送り出し機関を利用することが求められます。これは二国間の協力覚書で定められているため、ベトナムの特定技能外国人を受け入れたい企業は、送り出し機関を通じて紹介を受けましょう。
国や採用方法によっては送り出し機関を通さなくても受け入れが可能ですが、その場合は企業側で在留資格「特定技能」の要件を満たしているか確認する必要があります。なお、送り出し機関以外のルートでの特定技能外国人の受け入れを認めていない国もあるので、各国の方針をチェックすることが重要です。
受け入れ機関
特定技能外国人を受け入れる企業や個人事業主を、「受け入れ機関」といいます。先述したように、特定技能外国人を受け入れるには特定産業分野に該当していなければなりません。
また、「法令違反を起こしていない」「特定技能外国人に対する支援体制が整っている」などの要件も満たす必要があります。貴重な即戦力となる特定技能外国人を受け入れるためにも、定められた要件を満たせるよう尽力しましょう。
登録支援機関
自社だけで特定技能外国人への支援体制を整えるのが難しい受け入れ機関に代わり、支援計画に基づく支援を実施するのが「登録支援機関」です。受け入れ機関は、支援計画の全部または一部の実施を、支援委託契約を結んだうえで登録支援機関に委託できます。対応言語や支援内容、得意とする業種は登録支援機関ごとに異なるため、委託先は慎重に選びましょう。
なお、支援の全部を登録支援機関に委託した場合、受け入れ機関が満たすべき要件の一つである「支援計画を適正に実施できる体制」の基準に適合しているとみなされます。自社で支援担当者を置く体制づくりが難しい場合は、有力な選択肢となるでしょう。
ただし、一部のみを委託する場合は、自社で実施する項目について受け入れ機関自身が基準を満たす必要があります。また、委託後も支援計画の作成義務や支援全体に対する責任は受け入れ機関に残る点には注意が必要です。
参照元:
出入国在留管理庁「特定技能制度」
厚生労働省「リネンサプライ分野における新たな外国人材の受入れ(在留資格「特定技能」・「育成就労」について)」
出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」

特定技能とは?制度の仕組みや技能実習との違いをわかりやすく解説
高賃金や安定した生活環境を理由に、在留資格「特定技能」を取得して日本で働くことを希望するベトナム人は多いようです。実際に、出入国在留管理庁が発表した「令和7年末現在における在留外国人数について」によると、2025年12月末時点で在留資格「特定技能」をもつ外国人39万296人のうち、ベトナム人は16万4,352人で最多となっています。
参照元:出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数」
ベトナムは人口構成が若く、働き盛りと呼ばれる現役世代が豊富です。また、日本語や技能に関する試験を経て来日する人材が多いため、企業にとって重要な戦力になっています。加えて、宗教上の配慮が必要なケースは比較的少ないとされます。初めて在留資格「特定技能」をもつ外国人を雇用する企業は、ベトナム人の中から採用候補を探してみるという選択肢もあります。
一方で、特定技能全体に占めるベトナム人の割合は縮小傾向にあり、インドネシアやミャンマーからの受け入れも増えているのが実情です。国ごとに浸透している文化や価値観、受け入れに必要な手続きなどは異なるため、自社の特性や担当者のリソースといった総合的な観点から判断しましょう。
参照元:
出入国在留管理庁「特定技能在留外国人数の公表等」
出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」

ベトナム人あるあるを紹介!仕事に対する考え方の特徴やタブーな言動も解説
ベトナム人が在留資格「特定技能」を取得するには、推薦者表の申請といった独自の手続きが必要です。ここでは、現地採用の場合と日本国内での採用の場合に分けて、ベトナム人が在留資格「特定技能」を取得する方法を解説します。
ベトナムから来日する際の手続き
ベトナムから在留資格「特定技能」をもつ人材を呼び寄せる場合、受け入れ機関は「DOLAB(ベトナム内務省海外労働管理局)」認定の送り出し機関と「労働者提供契約」を締結しなければなりません。また、ベトナム人が海外での就労についてベトナム側の手続きを完了したことを証明するために、送り出し機関を通じて「推薦者表」の交付申請をしてもらう必要があります。この推薦者表は在留資格認定証明書交付申請を行う際に提出が必要となるため、発行が完了したら日本への送付を依頼しましょう。受け入れ機関と認定送出機関が結ぶ「労働者提供契約」の内容については、駐日ベトナム大使館労働管理部が問い合わせ先とされています。
なお、雇用する特定技能外国人との雇用契約や、在留資格認定証明書交付申請といった通常の手続きも受け入れ機関が行うため、どのような準備が必要かをあらかじめ確認しておくことが重要です。
日本に在留するベトナム人を雇用する際の手続き
日本国内に在留するベトナム人を在留資格「特定技能」で雇用する場合、雇用契約の締結や在留資格変更許可申請といった手続きを行います。また、駐日ベトナム大使館への「推薦者表交付申請」も必要です。どちらの手続きも原則として雇用するベトナム人本人が行いますが、受け入れ機関が用意する書類もあるので忘れずに準備しましょう。なお、推薦者表交付申請は受け入れ機関のほか、職業紹介事業者および登録支援機関が代理で行うことも可能です。
推薦者表が必要な人と不要な人
日本にいるベトナム人を採用する場合、在留資格変更許可の申請時に推薦者表の提出が必要かどうかは在留状況によって変わります。出入国在留管理庁によると、2024年6月27日以降に行うベトナム人の在留資格変更許可申請について、推薦者表の提出が必要な人は次のとおりです。
- 技能実習2号または3号の修了者(修了見込みの方を含む)
- 日本国内において少なくとも2年間の課程を修了した留学生(修了見込みの方を含む)
出典:出入国在留管理庁「申請手続」
上記に当てはまらない人は、推薦者表の提出は必要ありません。ただし、「留学」の在留資格を保有するベトナム人で上記に該当しない場合は、現在の課程を修了または修了見込みであることを証明する卒業証明書などの書類の提出が求められます。
すでに在留資格「特定技能」で在留している人が、転職によって受け入れ機関や分野を変更したり在留期間を更新したりする場合も、推薦者表の提出は不要です。
採用ルート全体の比較は「ベトナム人を特定技能で雇用するには?企業側のメリットや注意点を徹底解説」の記事をご覧ください。
参照元:出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」
ベトナム政府と日本政府は、特定技能外国人の受け入れ・送り出しに関する二国間協定を締結しており、協力覚書「特定技能MOC」を交換しています。特定技能MOCは、在留資格「特定技能」をもって日本で働くベトナム人の就労をサポートすると共に、悪質な労働仲介業者(ブローカー)の排除を目的とした協力覚書です。
ここでは、特定技能MOCの内容を詳しく紹介するので、ベトナム人の特定技能人材を雇用したい企業はチェックしてみましょう。
ベトナム政府が承認した場合のみ受け入れが認められる
先述したように、在留資格「特定技能」をもつベトナム人を雇用するためには、当該人物がベトナム政府から正式に承認を受けた証である「推薦者表」が必要です。原則として、ベトナムから呼び寄せる場合は必須、国内での変更は在留状況によって分かれるため、ベトナム人特定技能人材の雇用では、二国間取り決めに則って推薦者表の交付申請をきちんと行いましょう。
なお、推薦者表の様式は2024年3月に新しいものに変更されています。申請の際は出入国在留管理庁が公開している最新の様式を使用してください。
ベトナムで禁止されている職業・地域では就労できない
ベトナムの法律では、自国民を海外に派遣してはならない職業と地域が具体的に定められています。「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」第7条では、次のような仕事への派遣が禁止されています。
- レストラン、ホテル、娯楽センターにおけるマッサージ
- 爆発物や非鉄金属鉱石の精錬時に発生する有害物質に恒常的に接触する作業
- 開放状態の放射線源に接触する作業、放射性鉱石の採掘
- 強い毒性をもつ薬剤に恒常的に接触する生産・梱包作業
- 野生動物、鮫、クジラの狩猟
- 地下や海底など、空気が不足し高圧が発生する地域での恒常的な作業
- 遺体の調整、埋葬、火葬、土葬墓を掘り起こす作業
あわせて、戦争が発生している地域や発生する危険がある地域、放射線や毒に汚染されている地域、特に危険な疫病が流行している地域への派遣も禁止されています。
特定技能の17分野でこれらに直接該当するケースは多くないものの、社会倫理や労働者の衛生に反する業務、日本側で就労が認められていない業務に従事させることもできません。業務内容が該当しないか不安な場合は、認定送り出し機関や駐日ベトナム大使館労働管理部に事前確認しておくと安心です。
求人は認定を受けた送り出し機関で探す
在留資格「特定技能」をもつベトナム人は、認定を受けた送り出し機関で求人を探すよう、特定技能MOCによって定められています。この協力覚書に基づいて、受け入れ機関側もベトナム内務省海外労働管理局(DOLAB)認定の送り出し機関と「労働者提供契約書」を締結し、承認・登録を受けなければなりません。
認定を受けた送り出し機関かどうかは、出入国在留管理庁がWebサイト上で公開している2つのリストで確認可能です。ベトナム政府から提供された認定送り出し機関の一覧に加えて、認定を喪失した、または一時停止された送り出し機関のリストも公開されています。一覧に名前があるだけで判断せず、両方を突き合わせて現在も有効かを確かめておくと安心です。

誠実なケアで指名も獲得。外国人採用で生まれる、新たな交流と活気
参照元:
出入国在留管理庁「二国間取決め・認定送出機関」
出入国在留管理庁「ベトナムに関する情報」
国際協力機構「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」
受け入れ機関は、ベトナム人が現地から日本へ渡航する交通費や教育訓練費だけでなく、送り出し機関に対する仲介料も支払わなければなりません。そのため、ベトナム人が在留資格「特定技能」を取得し日本で就労する際に発生する費用は、日本人を雇用するときよりも高くなる可能性があります。
なお、受け入れ機関が送り出し機関に支払う費用は特定技能外国人の状況によって異なるので、トラブルを未然に防ぐためにもあらかじめ仕組みを把握しておきましょう。
特定技能1号評価試験の合格者の場合
特定技能1号評価試験に合格したベトナム人を海外から雇用する場合、送り出し機関はサービス料(仲介手数料)を徴収します。2022年1月1日に施行されたベトナムの「契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律」では、送り出し機関が労働者本人から徴収できるサービス料の上限が定められており、契約期間12か月ごとに賃金1か月分、36か月以上の契約であれば賃金3か月分が上限とされています。 また、受け入れ国側(日本の企業)がサービス料を支払った場合は、その不足分のみを本人から徴収する仕組みです。つまり、企業側の負担割合が大きいほど本人の負担は軽くなります。実際の負担額と分担は労働者提供契約で取り決めるため、契約締結前に内訳を確認しておきましょう。
なお、業種や職種によっては、より低い上限額が通達で定められている場合があります。法的効力をもつのはベトナム語の法令であるため、最終的な確認はDOLABまたは駐日ベトナム大使館労働管理部にご相談ください。
技能実習2号・3号から移行したベトナム人の場合
日本にいるベトナム人技能実習生を在留資格「特定技能」に移行して雇用するケースでは、送り出し機関へのサービス料は発生しません。ただし、日本国内の人材紹介会社や登録支援機関を利用する場合は、その費用が別途かかります。また、技能実習2号・3号修了後、ベトナムに帰国した人材を在留資格「特定技能」で雇用する場合は、送り出し機関の仲介が必要となるため費用が発生します。
一例として、介護分野でベトナム人を受け入れる際の費用感を「特定技能『介護』でベトナム人を採用するには?メリット・費用・注意点を解説」の記事で確認してみてください。
企業が負担する費用の内訳
送り出し機関に支払うサービス料のほかにも、受け入れ機関が負担する費用があります。ベトナムの法律では、労働者本人から徴収できない費用が定められているため、次のような項目は企業側の負担になると考えておきましょう。
- 日本語や技能に関する渡航前の教育・訓練費
- ベトナムから日本への渡航費
- 在留資格の申請や書類作成にかかる費用
本人が教育訓練費や日本行きの航空券などを立て替えた場合は、その分を受け入れ機関が負担します。相場から大きく外れた請求や内訳が示されない請求があれば、契約前に根拠を確認しておくことが大切です。費用は、原則として送り出し機関の口座へ送金する流れになっているので、忘れずに手続きを行いましょう。

ベトナム人を特定技能で雇用するには?企業側のメリットや注意点を徹底解説
参照元:在ベトナム日本国大使館「『契約に基づいて外国で働くベトナム人労働者に関する法律』関連法令の仮和訳の掲載」
送り出し機関は自社で選べるのか
認定を受けた送り出し機関であれば、自社で自由に選ぶことは可能です。
ただし、実際には日本側の人材紹介会社や登録支援機関経由で提携機関を紹介してもらい、送り出し機関との間に立ってもらうケースが多くなっています。現地の送り出し機関を自社で直接選定・やり取りする場合は、同じ言語で連絡や相談をできる担当者がいるか、入国前の教育内容が自社の業務に合っているかなどを確認しておきましょう。
推薦者表の承認にはどのくらいかかるのか
承認までに要する期間は、公表資料では明示されていません。しかし、関係各所とのやり取りや企業側と本人で用意すべき書類などいくつものフローがあるため、入社予定時期から逆算して余裕をもったスケジュール管理を行うことが大切です。

登録支援機関にかかる費用の相場・内訳は?委託のメリットや注意点も解説
在留資格「特定技能」をはじめとして、日本で働くために在留資格を取得するベトナム人は、近年増加傾向にある一方、特定技能全体に占める割合は縮小しています 。ベトナム政府と日本政府は特定技能に関する二国間協定を結んでおり、適正な制度整備に尽力している状況です。ベトナム人の特定技能人材を雇用する際は、悪質な仲介業者によるさまざまな被害を防ぐために、協力覚書「特定技能MOC」で定められた正当な手順を踏んで受け入れるよう心掛けましょう。
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