執筆: Leverages Global編集部 (ライター)
介護職で外国人雇用を検討している採用責任者の方のなかには、日本人雇用に比べて初期費用や教育コストの負担に不安を抱く方もいるのではないでしょうか。国や地方自治体では、外国人材の受け入れを後押しするために、事業所の経費を一部負担する多様な補助金・助成金制度を整えています。
本記事では、介護分野の外国人雇用で活用できる主要な制度と受給要件を解説します。申請手順や注意点もまとめているので、ぜひお役立てください。
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目次
この記事のまとめ
- 介護分野の外国人材の受け入れには、国と自治体が設ける補助金・助成金を活用できる
- 受給に当たっては、外国人材向けの就労環境整備や研修の実施といった取り組みが必要となる
- 経費を一時立て替えられるだけの資金準備を行い、スケジュールに余裕をもって申請準備を進める
- 申請したい制度の最新要件を確認し、手続きに不安がある場合は専門家や支援機関への相談がおすすめ
「補助金」と「助成金」は、国や自治体から支給される原則返済不要の資金のことです。どちらも定められた要件を満たす事業所が対象となりますが、支援の目的や予算の有無、 受給の確実性などが異なります。
自社の目的に適した制度を選ぶために、以下でそれぞれの特性を整理しておきましょう。
補助金の概要
補助金の主な目的は「事業の拡大・設備投資への支援」です。財源は税金などの公的資金のため、補助金ごとにあらかじめ予算の上限が設けられています。申請期間内に必要書類を提出し、厳しい選考・採択を経て初めて支給が決定する仕組みです。
ただし、予算枠がある性質上、期間内であっても上限に達した時点で公募が締め切られることがあります。要件を満たしていても必ず受給できるとは限らない点に注意が必要です。
助成金の概要
主に厚生労働省が所管する助成金は、企業の「雇用維持・労働環境の改善」のサポートを目的としています。雇用保険料を財源としているため、雇用保険に加入している企業が支給対象です。補助金に比べて予算という概念が強くなく、定められた受給要件をクリアすると原則として申請した全事業所に助成金が交付されます。
通年で申請を受け付けているものが多いため、財務計画に組み込みやすく、特に初めて外国人採用を進める事業所にとって活用しやすい制度です。助成金をベースにしつつ、スポットで補助金を組み合わせるといった活用方法もおすすめといえます。

外国人介護人材の受け入れの現状を紹介!メリット・課題や施設側の準備も解説
介護分野の外国人採用で活用できる補助金・助成金は、国の機関が管轄するものと、自治体が独自に設けるものに大別されます。ここでは、実際に介護分野における外国人労働者の受け入れで使える補助金や助成金の種類について見ていきましょう。
国が支給する補助金や助成金
厚生労働省など国の機関が管轄する補助金や助成金は、外国人材特有の事情に配慮した就労環境の整備や、業務スキル向上のための取り組みに対する支援のように、目的別に細かくコースが分かれているのが特徴です。
以下で、代表的な制度を紹介します。
人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)
「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」では、外国人労働者がスムーズに日本の現場に適応できるよう、雇用労務責任者の選任と就業規則の多言語化に加えて、相談体制の整備などにかかる経費が国から助成されます。
単なる雇い入れに対する手当ではなく、言語や文化の壁による現場のトラブルを防ぎ、長く安心して働いてもらうための環境投資をサポートする仕組みです。
【受給要件】
- 外国人労働者を適正に雇用し、就労環境整備計画を提出して認定を受けること
- 指定の就労環境整備措置を新たに導入・実施すること
- 計画期間終了後、一定期間経過したあとの外国人労働者の離職率が15%以下であること
【支給額】
- 1制度導入につき20万円(上限80万円)
なお、上記以外にも雇用関係助成金共通の受給要件などがあるため、事業所を管轄する労働局やハローワークに問い合わせてみてください。
人材開発支援助成金(人材育成支援コース)
「人材開発支援助成金」とは、従業員に対して、業務に関連した専門的な技能や知識を習得させるための職業訓練などを実施した場合に、研修費用や訓練期間中の賃金の一部を国がバックアップする制度です。
7つあるコースのうち、国籍問わず活用しやすいのは「人材育成支援コース」とされています。外国人介護人材が現場で必要な日本語や実技を学ぶための講習費用と、期間中の賃金の一部を助成してもらえるのが特徴です。
【受給要件】
- 雇用保険適用事業所の事業主および対象労働者が被保険者であること
- 研修や人事の担当課長などを「職業能力開発推進者」として選任していること
- 「事業内職業能力開発計画」を策定のうえ、雇用する労働者に周知していること
- OFF-JTまたはOFF-JTとOJTを組み合わせた訓練を実施すること
- 訓練開始日の半年から1ヶ月前までの間に「職業訓練実施計画届」を労働局へ提出すること
【支給額】
- 企業規模と実訓練時間数によって変動する
- 中小企業の場合:10時間以上100時間未満は15万円、100時間以上200時間未満は30万円、200時間以上は50万円
なお、計画届の提出期限を過ぎた場合や、実訓練時間数が10時間に満たない場合は支給対象外となります。研修の実施日程が固まった段階で、逆算して計画届の提出スケジュールを押さえておきましょう。
人材育成支援コースには「人材育成訓練」「認定実習併用職業訓練」「有期実習型訓練」「中高年齢者実習型訓練」の4つの訓練メニューが用意されており、細かい要件や支給額はそれぞれで異なります。訓練対象者やどのような育成を行いたいかに応じて適切なものを選択しましょう。
OJTとOFF-JTは、企業などで行われる人材育成・職業訓練の代表的な2つの手法です。OJT は実際の業務現場での職場内訓練を指し、OFF-JTは外部研修やeラーニングなどの職場外訓練を指します。
自治体が独自に設ける補助金制度
ここでは、各都道府県や市区町村が創設している補助金制度のなかで、介護分野における外国人材を対象としたものを紹介します。なお、以下に記載するもの以外で活用できる補助金については、事業所の所在地の制度情報について調べてみてください。
外国人介護人材受入促進事業
「外国人介護人材受入促進事業」は、補助金制度のなかでも比較的多くの自治体で実施されているものの一つです。詳細な補助対象は各都道府県によって異なりますが、主に外国人材を確保するためのマーケティング活動や現地機関との連携を強化するための訪問活動、採用・広報活動などにかかる費用を補助しています。
たとえば、山梨県(2026年度)の「外国人介護人材獲得強化事業費補助金」では、送り出し国での事前調査や現地の学校・送り出し機関との関係構築、海外での説明会開催といった採用・広報活動が対象です。補助額は1法人あたり50万円以内で、補助率は10割に設定されています。また、愛知県(2026年度)では外国人介護人材定着促進事業および獲得強化事業がこれに該当します。定着促進事業は「1事業所当たり実支出額に4分の3を乗じた額と22万5,000円を比較して少ないほうの額」、獲得強化事業は「1法人当たり実支出額と50万円を比較して少ないほうの額」が補助対象です。
外国人介護人材受入施設等環境整備事業補助金
「外国人介護人材受入施設等環境整備事業補助金」は、既存の現場職員と外国人材のコミュニケーションを円滑にするための取り組みや、介護福祉士の資格取得を目指す外国人材に対する学習支援費用の一部などを補助しています。
具体的には、介護業務で使用できる多言語対応の翻訳機やコミュニケーションの促進に寄与する研修の受講費、介護福祉士の資格取得に必要な教材費・外部講習参加費などが対象です。業務マニュアルの多言語翻訳を外部へ委託する費用もカバーできる場合があり、現場で受け入れる日本人職員の負担や不安の軽減につながるでしょう。
補助額は各自治体によって異なります。たとえば、奈良県(2026年度)では、1施設当たり上限額20万円もしくは実支出額に3分の2をかけた額のいずれか少ないほうと定められています。また、兵庫県(2026年度)の補助額は事業所負担額の3分の2(上限10~20万円)に設定されており、取り組みに応じて上限額が変動する仕組みです。
外国人留学生奨学金等支給支援事業
「外国人留学生奨学金等支給支援事業」は、介護福祉士の資格取得を目指し、その都道府県内で介護業務に従事する予定の留学生に対して、介護事業者等が支給する奨学金等の一部を補助する制度です。介護福祉士養成施設に通う留学生と早期に関係を構築しながら、卒業後に自社で長く活躍してもらうための採用・育成モデルを、補助を受けながら実現できる点がメリットといえます。
山梨県の「介護事業者外国人留学生支援事業費補助金」では、日本語学校または介護福祉士養成施設に通う留学生へ支給する以下の経費について、基準額の3分の1が補助されます。
- 学費:年額60万円以内
- 入学準備金:20万円以内(1回限り)
- 就職準備金:20万円以内(1回限り)
- 介護福祉士試験受験対策費用:1年度あたり4万円以内
- 居住費などの生活費:年額36万円以内
生活費には、民間賃貸住宅の家賃のほか、食費や光熱費といった日常生活で継続的に発生する経費も含まれます。また、補助基準額を超えて積極的に支援を行った場合は、年額24万円までの加算を受けられる仕組みも用意されています。

【2025年】外国人雇用でもらえる助成金7選|金額や条件を徹底解説
参照元: 厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」 厚生労働省「人材開発支援助成金」 山梨県「外国人介護人材の受け入れについて」 愛知県「外国人介護人材受入促進事業について【申請受付を開始しました】」 奈良県「外国人介護人材受入れ施設等環境整備事業補助金」 兵庫県「外国人介護人材受入施設環境整備事業」
ネット上で拡散されやすい「外国人を1人雇えば72万円もらえる」という制度は存在しないため、この情報は誤りです。正しくは、厚生労働省の「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」において、「外国人労働者の就労環境を整えるために支出した費用の一部について、事後支給される」仕組みです。「72万円」という数字は、同制度で賃金要件を満たした場合の2024年度までの最大支給上限額を指しています。
先述したように、この制度は単に「外国人材を雇用したこと」に対する助成金ではなく、就業規則の多言語化や雇用労務責任者の選任といった具体的な就労環境整備措置を事業所側が実施し、かつ一定の離職率基準を達成したのち初めて助成される制度です。補助金目当ての安易な外国人雇用を助長するものではなく、外国人材が日本の介護現場で安心して就労できるよう、真摯に取り組む事業所を支援するための厳格な公的制度であることを正しく理解する必要があります。
なお、先述のとおり、同制度の支給上限額は80万円に引き上げられました。ルールは随時更新されるため、最新の情報を漏れなくチェックしましょう。

外国人が介護福祉士の資格を取得するには?最新の合格率や施設ができる支援を解説
参照元:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
「行政手続きは複雑かつ時間がかかりそう」という先入観から、補助金・助成金の申請を諦めてしまうケースも多いでしょう。しかし、あらかじめ全体の流れを把握し工程をシンプルに分解すると、それほど難しい手続きではありません。確実に要件を満たして補助金・助成金を受け取るためにも、公募要領の確認と綿密な計画策定、事業実施、実績報告の提出期限に向けたスケジュール管理を徹底することが大切です。
細かい申請手続きは制度の種類によって異なるため、ここでは基本的な流れについて紹介します。
最新の公募要領を確認する
まずは、事業所が所在する自治体や厚生労働省のWebサイトで、最新の「公募要領」を入手しましょう。介護外国人材の採用に関する補助金や助成金は、年度ごとに予算枠や申請期間、対象となる要件・経費の種類が細かく見直されます。手続きの担当者が最初に「対象事業所の条件」や「申請期限」を確認し、全ての申請手順のスタートラインを整える作業が不可欠です。
見方を変えれば、以前は支給対象に含まれなかった経費なども制度の見直しで申請できるようになる可能性があるため、前年度と比較して都度チェックするのをおすすめします。
支給を受けようとする事業を実施する
公募要領を確認したら、認定を受けた計画書の内容に基づいて外国人材の受け入れ措置や機材の導入、研修といった対象事業を適切に行いましょう。事業の実施状況を客観的に証明できるよう、研修の受講案内書や出席簿、多言語化した社内マニュアルなどの写しを保管しておくことを推奨します。
事前に承認を受けた事業計画から外れた運用や費用の流用があると、補助金の支給対象外となる可能性があるため注意が必要です。
必要書類を揃えて期限内に提出・受給する
補助対象となる研修の実施や物品購入が完了したら、実際に支払った費用の領収書や研修カリキュラムなどを添付した必要書類を揃えて期限内に提出します。補助金や助成金は基本的に「事業完了後の後払い」の形式をとるため、対象経費の支出口座や領収書の保管・管理を厳格に行いましょう。支給審査が無事に完了して承認されると、指定口座に資金が振り込まれる流れです。
書類作成や申請手続きに不安がある場合は、外国人材の補助金関連に強い専門家や支援機関のサポートを受けることで、手続き担当者の負担を最小限に抑えながら一つひとつ確実に進められます。

介護職で外国人採用をするには?在留資格や受け入れの流れ・注意点を解説
補助金や助成金を利用する際は、支給要件の徹底的な事前確認に加えて、原則「後払い」であることを念頭に置いた資金繰りや余裕をもったスケジュール管理が重要です。申請に必要な書類提出や実績報告の期日を過ぎると受け付けられず、受給できなくなる可能性があります。担当者は「事業実施が期日に間に合うか」「必要書類を不備なく揃えられるか」といった点に細心の注意を払いましょう。
また、いずれの制度も「ただ外国人を雇い入れるだけでは支給されない」という基本ルールと、審査に時間がかかることや、場合によっては採択されない可能性も念頭に置いておく必要があります。
どうしても補助を受けたいからといって、申請事項を偽り本来受け取れないはずの資金を受け取ることは「不正受給」に当たります。厚生労働省の雇用関係助成金では、不正受給が判明した場合、助成金が不支給または支給取消となり、すでに受給していれば年3%の延滞金と返還額の20%の違約金を加えた返還が求められます。あわせて、原則として事業所名が公表され、その後5年間は助成金を受けられなくなります。悪質な場合は刑事告訴の対象となることもあるため、要件の解釈に迷う場合は自己判断せず、労働局や社会保険労務士に確認しましょう。

特定技能「介護」とは?業務内容・採用メリット・受け入れ要件を解説
ここでは、介護分野の外国人補助金に関するよくある質問について回答します。
複数の補助金・助成金を併用できる?
同一の経費項目に対して補助金を二重に受給することはできませんが、対象経費が明確に分かれていれば別々の制度の併用が可能です。
たとえば、厚生労働省の「人材開発支援助成金」で人件費や訓練費をカバーしつつ、「人材確保等支援助成金」と自治体の「受入定着支援事業補助金」を併用して、外国人労働者の住居費や就労環境整備費を総合的に賄うといった活用方法があります。経費の重複にさえ注意すれば、複数の制度をうまく組み合わせた効率的な運用が可能になるでしょう。
審査が不採択になった場合の再申請は可能?
一度申請を却下されたとしても、予算上限に達していない追加公募期間内であれば、不採択となった理由を修正したうえで再申請や次期への応募が可能です。書類の不備や事業計画書の具体性不足などの見直しと、改善を行う前向きなアプローチを含んで再申請を行いましょう。
自社のみでの修正が難しい場合は、外部の専門家に添削してもらったりアドバイスを受けたりすることで、次回の審査通過率を高めることができます。

【行政書士監修】外国人採用まるわかりガイド|注意点・メリット・募集・雇用の流れ
外国人介護人材の受け入れに当たっては、環境整備や生活支援、講習費用などの初期コストが日本人採用時よりも発生しやすい傾向があります。しかし、国や自治体が提供する公的な補助金・助成金をうまく活用することで、事業所の費用負担を軽減できます。制度ごとに「就労環境の改善」「専門スキルアップ」「受入体制の強化」のように目的や要件が異なるため、まずは自社の課題に合った支援策を正しく見極めましょう。
資金を適切に受給するためには、各種書類の準備や厳格なスケジュール管理が求められます。手続きに不安がある場合やスムーズな導入を目指す場合は、外国人材の採用・定着を専門に扱う支援機関を活用しながら、体制整備を進めていくのがおすすめです。
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