執筆: Leverages Global編集部 (ライター)
「留学生はどの健康保険に加入するの?」と疑問に思う採用責任者の方もいるでしょう。学業が本分である留学生は企業の健康保険の加入条件を満たさないため、原則として国民健康保険に加入します。
本記事では、留学生が国民健康保険に加入・脱退・変更する際の手続きを解説。留学生が国民健康保険に加入することで受けられる給付内容についてもまとめています。企業が行う実務を把握し、留学生の健康保険加入をサポートしましょう。
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目次
この記事のまとめ
- 留学生が加入するのは国民健康保険であり、たとえアルバイトをしていても労働時間の上限があるため、企業の健康保険への加入要件は満たさない
- 国民健康保険に加入すれば、病院窓口での医療費の自己負担額が3割に抑えられ、医療費が高額になっても自己負担限度額を超えて支払ったぶんは払い戻される
- 国民健康保険料は前年の日本での所得を基に算出されるため、留学生の来日1年目は低額となり、2年目以降も前年の収入が一定額以下であれば減免申請ができる
- 留学生が国民健康保険に未加入の場合、医療費が全額自己負担になるだけでなく、在留資格の更新申請においても不利益を被るリスクがあるため注意が必要
日本に3ヶ月以上滞在する予定の外国人留学生は、国民健康保険に加入します。これは、国民健康保険法や住民基本台帳法といったいくつかの関連法令によって定められており、日本で住民票が作成される全ての中長期在留者が加入対象です。
企業の中には、留学生をアルバイトとして雇うところもあるでしょう。2024年10月より、従業員数が51名以上の企業で働くアルバイトも一定の要件を満たすことで健康保険の加入対象となりました。しかし、外国人留学生の場合、要件の1つである「学生ではないこと」に当てはまらないため必然的に会社の健康保険ではなく国民健康保険に加入することとなります。

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参照元: 日本留学情報サイト「保険」 日本年金機構「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大」
留学生は、国民健康保険に加入し保険料を支払うことで給付を受けられます。国民健康保険加入者への主な給付内容は、以下のとおりです。
療養の給付
国民健康保険の加入者は、保険医療機関の診察・治療を受けた際、かかった医療費の3割のみを自己負担で支払います。残りの7割は国民健康保険から後日支払われる仕組みです。これを「療養の給付」といいます。療養の給付を受けるには、保険医療機関の窓口でマイナ保険証または資格確認書の提示が必要です。
国民健康保険法第36条で定められているところによれば、療養の給付の範囲には以下の5つがあります。
- 診察
- 薬剤または治療材料の支給
- 医療処置や手術、その他の治療
- 在宅療養上の管理やそれに伴う世話、その他の看護
- 医療機関または診療所への入院、および療養に伴う世話やその他の看護
なお、個室に入院した際の差額ベッド代や美容整形の費用、予防接種などは療養の給付の対象外なので、全額自己負担で支払います。
高額療養費
高額療養費とは、国民健康保険に加入している人の1ヶ月の医療費の自己負担額が一定の金額を超えた場合、申請を行うとその超過分が戻ってくる制度です。自己負担限度額は、国民健康保険料の算定の基礎となる前年の所得や年齢によって異なります。
なお、医療費すべてが高額療養費の対象になるわけではありません。前述したような、自己負担の範囲になるものは高額療養費制度の対象外となります。
海外療養費
海外療養費とは、留学生が一時帰国中や国外旅行時などに現地の医療機関を受診した際、申請すれば治療にかかった一部医療費の払い戻しを受けられる制度です。なお、支給対象になるのは日本で保険診療として認められているもののみで、美容整形やインプラントなどは含まれません。海外で支払った医療費から、自己負担分を差し引いた金額が支給されます。
出産育児一時金
出産育児一時金は、出産費用による家計負担を軽減するために支給される手当金です。通常、正常分娩での出産は療養の給付の適用外ですが、代わりに「出産育児一時金」として子ども1人につき原則50万円が支給されます。留学生の場合、母国へ一時帰国して出産するケースでも、条件を満たしたうえで申請すれば手当金の受給が可能です。
出産育児一時金を利用する際は、分娩を行った医療機関が被保険者本人に代わって請求する「直接支払制度」が一般的とされています。このほか、被保険者が自ら支給申請を行って医療機関が代理で受け取る「受取代理制度」や、一旦医療機関の窓口で出産費用を全額支払い、あとから手当金を受け取る「償還払い制度」もあります。
その他
上記で説明したもの以外に、国民健康保険加入者が受けられる給付を紹介します。
入院時の食事代
入院したときの食事代は、所得に応じて1食につき240円または510円が自己負担、残りが国民健康保険からの給付です。なお、入院時の食事代の自己負担額は、減額されることもあります。具体的には、小児慢性特定疾病児童または指定難病患者、減額認定を受けている人は食事代の自己負担の減額が可能です。
葬祭費
国民健康保険に加入している人が亡くなった場合、葬儀を行った人(喪主)に対して「葬祭費」が支給されます。給付内容は、喪主に対する一時金の支給、もしくは葬儀を執り行うために必要なものの支給です。支給額は留学生の居住地がある自治体によって異なります。
移送費
移送費とは、病気や怪我で歩行が困難な国民健康保険の加入者が、医師による指示で入院治療や転院せざるを得なくなった際、移動に使った費用が支給される制度です。バスやタクシー、電車の運賃をはじめ、運転手を雇った際に支払う賃金も対象となります。

外国人の雇用保険の加入手続き【添付書類や適用除外者も解説】
参照元: e-Gov法令検索「国民健康保険法(昭和三十三年法律第百九十二号)」 厚生労働省「国民健康保険の給付について」 厚生労働省「医療保険」
留学生が支払う国民健康保険料は、日本人と同様に本人が住んでいる市町村や前年の所得によって計算されます。正しい保険料を決定するには、自治体への所得の申告が必要です。
国民健康保険料の算定方法
国民健康保険料は「医療分」「支援金分」「介護分」の大きく3つの要素で構成されています。それぞれの保険料を算出する際に、各市町村によって以下の4種類からいずれかの方式が用いられ、算出された金額を合算したものが1年間の国民健康保険料となる仕組みです。
引用元:厚生労働省「国民健康保険料・保険税のしくみ」
多くの自治体が、前年の1~12月の所得に応じて計算する「所得割」と、加入者の世帯に属する人数に応じて計算する「均等割」を組み合わせて保険料を決定する方法を採用しています。
しかし、アルバイトを始めた留学生のなかには、前年よりも国民健康保険料が急に高くなって混乱してしまう人もいるようです。外国人留学生の不安を軽減するために、アルバイトの収入によって翌年の国民健康保険料の金額が変わる可能性があることを説明しておくのが望ましいでしょう。

留学生の労働時間は週28時間以内!アルバイト雇用の就労条件や法律を解説
参照元:厚生労働省「国民健康保険の保険料・保険税について」
留学生の経済状況によっては、国民健康保険料が高額で支払いが難しいというケースもあるでしょう。しかし、国民健康保険の納付には、留学生であることを理由にした完全免除はありません。
一方で、前年の所得金額が一定基準以下の場合は、国民健康保険料の支払いを減額できる可能性があります。措置を受けるためには所得を届け出なければならないため、前年の収入の有無に関わらず市区町村への正しい申告が必須です。
なお、減額措置の細かい内容は自治体によって異なります。もし、雇用している留学生アルバイトに国民健康保険料の納付が難しいと相談されたら、本人が住む自治体の情報に基づいた減額措置についてアドバイスしてみましょう。
保険料や医療費の滞納・未払いは在留審査に影響する
保険料や医療費の支払いが困難だからといって、期日を過ぎて滞納したり未払いのまま放置したりするのは義務違反行為に当たります。国内でも、在留外国人の国民健康保険料の未納付が度々問題視されており、今後はそれらに対するペナルティや在留資格の更新・変更時の審査が厳格化される予定です。たとえば、ビザ更新時に保険料の未納が発覚すると更新が不許可になったり、過去の滞納の影響で短い在留期間しか認められなかったりするリスクがあります。
企業が「留学生を新卒で採用しよう」と考えても、保険料の滞納・未払いがあったら在留資格「留学」から就労ビザへの変更が認められず、内定を取り消さざるを得ない場合もあるでしょう。留学生本人だけの問題として捉えず、企業側も可能な範囲で気を配ることが大切です。

在留資格取り消しの事由とは?従業員や企業はどうなる?起こりうるリスク
参照元: 日本留学情報サイト「国民健康保険料の減額措置について」 内閣官房ウェブサイト「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」
ここでは、留学生の国民健康保険の手続きを「加入」「変更」「脱退」に分けて紹介します。外国人留学生をアルバイト雇用する企業は、各種手続き方法について把握し、いざというときに手助けできるようにしておきましょう。
加入手続き
国民健康保険加入の手続きは、入国後、住民登録をして14日以内に留学生が居住する市区町村の役所で行います。なお、2025年12月2日以降は従来の健康保険証の新規発行は停止され、外国人も日本人と同様にマイナ保険証または資格確認書へ移行済みです。手続きの際は有効なパスポートと在留カードを持参し、転入届を出すタイミングでマイナンバーカードの交付と国民健康保険への加入手続きを一緒に行うのがスムーズでしょう。
「特定在留カード」もマイナ保険証として利用できる
「特定在留カード」とは、従来の在留カードとマイナンバーカードが一体化した新たなカードの形です。2026年6月14日より運用が開始されており、これまで別々の行政機関で行っていた複雑な手続きが、カードの一体化によってワンストップで完結します。
特定在留カードも医療機関で「マイナ保険証」として利用可能です。地方出入国在留管理局または市区町村の役所の窓口で交付申請を行うことができます。なお、マイナンバーカードと同様に特定在留カードの取得も任意のため、引き続き従来の在留カードとマイナンバーカードを分けて持つことも可能です。
変更手続き
国民健康保険の加入時から氏名が変わった場合は、変更から14日以内に居住する市町村の市役所で変更の手続きを行います。同じ市町村内で引っ越しを行った場合も同様です。
脱退手続き
日本を出国したり別の市町村に転居したりする際は、国民健康保険の脱退手続きが必要です。脱退手続きを忘れると、日本に滞在していないにもかかわらず国民健康保険料の請求が発生したり、以前住んでいた市町村からも二重に請求が来たりする可能性があります。別の市町村に引っ越す場合は脱退手続きをしたうえで、あらためて転入先の役所で国民健康保険の加入手続きを行いましょう。
就職して健康保険に切り替える際も、国民健康保険の脱退手続きは本人が行わなければなりません。企業が手続きを行ってくれると誤認し、社会保険と国保の両方に加入した状態になってしまう留学生も多いようです。企業は、留学生を正社員雇用したら、国民健康保険の脱退手続きを行ったか確認することをおすすめします。

外国人の社会保険加入条件とは?脱退一時金や社会保障協定についても解説
参照元: 厚生労働省「国民健康保険の加入・脱退について」 厚生労働省「在日外国人向け マイナ保険証のご案内」 出入国在留管理庁「特定在留カード等交付申請について」
留学生が加入するのは国民健康保険です。日本とは保険制度の仕組みが異なる国も多く、日本語に不慣れな留学生が自分だけで加入や脱退手続きを進めるのは困難といえます。留学生をアルバイト雇用する企業は、できる範囲で手続きのサポートや相談事への対応を行いましょう。
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